アボルブがAGAで承認され商品名はザガーロ
グラクソ・スミスクラインの前立腺肥大症治療薬であるアボルブが、
ザガーロの商品名でAGA治療薬として承認されました。
今までは前立腺肥大症の患者にだけしか処方されなかったのですが、
AGAなどの男性の脱毛症に対しても処方されることが可能になったといことです。
したがって今後は、
男性型脱毛症(AGA)の治療薬はMSD社のプロペシアとアボルブの2つの選択肢があるわけですが、
- プロペシアとアボルブのどちらを使えば良いか?
- プロペシアのような性機能に関する副作用はないのか?
という疑問にたいする情報をお届けしたいと思います。
目次
アボルブがザガーロとしてAGAで承認
グラクソスミスクライン社が、2015年9月28日に、
ザガーロが医療用医薬品として「男性における男性型脱毛症」の効能・効果で承認を取得しました
とプレスリリースしました。
詳しく見る ⇒ グラクソスミスクラインのプレスリリース
ザガーロの有効成分は、デュタステリドという化学物質で、既に前立腺肥大症治療薬としては2009年に国内で発売されています。
グラクソスミスクラインは、AGAの適応で開発中との噂が流れていたのですが、
2015年8月28日に開かれた厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において、
グラクソ・スミスクライン(GSK)の「ザガーロカプセル0.1mg、同カプセル0.5mg」の承認を了承したということが判明しました。
詳しく見る ⇒ 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会( 8月28日 )
薬事・食品衛生審議会が「承認を了承した」ということを受けて、厚生労働省が「承認」するという流れになるのですが、厚生労働省が正式に承認したということですね。
参考までのグラクソスミスクラインが厚生労働省の薬事・食品衛生審議会に提出した書類内容を記載します。
[対象疾患]
・男性型脱毛症は、主に前頭部及び頭頂部等においてアン ドロゲン (男性ホルモンの総称)に よ り誘発 されて脱毛が進行す る。頭皮の発毛に及ぼすアン ドログンは主にジヒ ドロテス トステロン (以下、「DHT」)と 考えられてお り、DHTは 5α還元酵素 (以下、「5AR」)に よリテス トステロンが変換 されて生 じる。
日本人成人男性における男性型脱毛症の発症頻度 は約 30%とされ、本邦において1,260万人がいると推定 されている (日本医事新報 4209:27-29,2004)。
[開発の経緯]
・申請者 は、デュタステ リドを有効成分 とし、前立腺肥大症を効能 ・効果 とした 「アボルブカプセル 0.5mg」の承認を取得 している。デュタステ リドは、テス トステ ロンを DHTに 変換する 5ARを 阻害す ることで、男性型脱毛症に対する効果 を発揮することか ら、「アボルブカプセル 0.5mg」と識別可能 となるようにカプセル剤皮の色を変更 し、本薬を開発 した。
[作用機序 ・特徴]
・5AR阻 害薬であ り、テス トステロンをジヒ ドロテス トステロンヘ変換す る 5ARを 阻害す ることで男性型脱毛症に対 し治療効果を発揮す る。
[類薬]
・プロペシア錠 0.2mg、同錠 lmg(フ ィナステ リド)、フィナステ リド錠 0.2mg「ファイザー」、同錠 lmg「ファイザー」 (フィナステ リ ド (プロペシアの後発品))
〔製剤名 (一般名)〕
[臨床上の位置づけ]
。本薬はフィナステ リドと同様の 5AR阻 害薬であ り、同 じ位置付けで使用 されると考えられ ることから、男性型脱毛症における新たな治療選択肢の一つ となると考える。
[海外の開発状況] ,
・デュタステ リド製剤は、前立腺肥大症の治療薬 としては 2014年 9月 時点において100ヵ 国以上で承認されている。男性における男性型脱毛症の治療薬 としては、韓国で承認 されている。
承認の内容をまとめると、
概要
- ザガーロカプセル 0.lmg
- ザガーロカプセル 0.5mg
一 般 名 デュタステリド
効 能 効 果 : 男性の男性型脱毛症
用 法 用 量
- 男性成人には、通常、デュタステ リドとして 0.lmgを 1日 1回経 口投与す る。
- 必要に応 じて 0.5mgを1日 1回経 口投与する。
とういことです。
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ザガーロの発売は11月頃か?
通常の医療用医薬品では、
- 薬事・食品衛生審議会が承認を了承
- 厚生労働省が承認
- 薬価収載
- 発売
という流れになるのですが、
これは「保険適用医薬品」の場合で、ザガーロの適応は男性型脱毛症は「保険適応外医薬品」で、
健康保険が使えない医薬品ですから、3の薬価収載はありませんので、厚労省が承認したらすぐにでも発売できるのです。
したがって、
ザガーロの発売は10月末から11月頃ではないかとみられています。
これから、
プロパーの教育、流通の関係、医師への情報活動などの準備があるからですね。
グラクソスミスクラインのフィリップ・フォシェ社長は、
「ザガーロ承認により、男性型脱毛症に悩む患者さんへ新たな治療選択肢をお届けする機会を得られたことを大変嬉しく思います。
グラクソスミスクラインでは、抗ヒスタミン剤「ザイザル」や抗ウイルス剤「バルトレックスなど、多くの薬剤を通じて、長年にわたり皮膚科領域に注力してまいりました。
我々は皮膚疾患に悩む患者さんが健やかな生活を送れるよう、引き続き尽力してまいります。」
とコメントしています。
プロペシアを発売しているファイザーでは、
「男性のQOL」を高めるとして、ED治療薬などとともに中年男性を対象にする戦略ですが、
グラクソスミスクラインは、皮膚科領域で攻める戦略のようです。
グラクソスミスクライン社では、「発毛Web」というAGAに関するサイトを作って、AGA治療薬領域に本腰で参入するようです。
見たところまだ内容が充実していませんし、「Coming Soon」となっている部分も多く、準備段階のようです。
詳しく見る ⇒ グラクソスミスクラインの発毛Webサイト
ファイザーはアメリカのグラクソスミスクラインはイギリスの製薬会社で、売上げランキングでは2位と6位で、アメリカ対イギリスの闘いになるようですね。
順位 企業名 国 2014年売上高
1位 ノバルティス スイス 52,547億円
2位 ファイザー アメリカ 46,715億円 –
3位 ロシュ スイス 38,232億円
4位 メ ルク アメリカ 36,527億円
6位 グラクソ・スミスクライン イギリス 32,544億円
14位 武田薬品 日本 15,291億円
ザガーロはどんなAGA治療薬なのか
ザガーロの有効成分は、グラクソスミスクラインが研究開発したデュタステリドという化学物質です。
アダポートという商品名で前立腺肥大症治療薬としてアメリカで2001年に発売され、その後、多くの国で発売されて、日本でも2009年に発売されています。
ザガーロは、前立腺肥大症治療薬と全く同じ物質です。
- 前立腺被弾症治療薬 : デュタステリ0.5mg 商品名・アボルブ
- AGA治療薬 : デュタステリ0.1、0.5mg 商品名・ザガーロ
ザガーロはDHT阻害薬
男性型脱毛症の原因は、テストステロンが5α-リダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変化し、DHTは発毛を抑制してしまうことによるので、ザガーロは5α-リダクターゼを抑制してDHTの産生を抑制します。
前立腺肥大症もDHTが原因ですから、前立腺肥大症治療薬はAGA治療薬にもなるということですね。
プロペシアも元々前立腺肥大症治療薬として開発された医薬品です。
男性型脱毛症の唯一の医療用医薬品であるファイザーのプロペシアも5α-リダクターゼを抑制してDHTの産生を抑制する医薬品です。
しかし、5α-リダクターゼには、1型と2型の2種類あるのですが、ファイザーのプロペシアは2型しか抑制しないのに比べて、アボルブは1型と2型の療法を抑制するとグラクソスミスクラインは明らかにしています。
発売は韓国に続いて2番目
デュタステリは前立腺肥大症治療薬としては多くの国で発売されているのですが、AGA治療薬としては韓国に続いて2番目です。
グラクソスミスクラインは男性型脱毛症としての開発も第2相試験まで進めたのですが、中止してしまったのですね、、、。
中止理由についてはグラクソスミスクラインは明らかにしていませんが、プロペシアと同じ作用によるので商業的なメリットがないと判断したのではないかと見られています。
しかし、第2相臨床試験では、プロペシアよりも有効だったと発表しています
詳しく見る ⇒ 「アボルブの臨床試験成績(英文)」
このサイトでも紹介していますので、下記をご覧下さい。
詳しく見る ⇒ アボルブはプロペシアより効果があるのか
グラクソスミスクラインのプレスリリースでも、
ザガーロは1型及び2型の5α還元酵素を阻害することで、DHTの生成を抑制しますと明記していますね。
気になるAGAでの有効性ですが、
臨床試験において、
- 発毛の評価指標で毛髪数の増加
- 育毛の評価指標で硬毛数および毛髪の太さの増加
等の効果が確認されたと記載しています。
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ザガーロの性機能に関する副作用は?
AGAの医療用医薬品はプロペシアに次いで2品目となるわけです。
プロペシアで気になるのは、「性機能に関する副作用」ですね、、、。
国内の医療機関では、
- わずか1~5%にすぎない
- 精神的な要素が大きい
- ED治療薬で改善できる
と非常に楽観的に考えているようなのですが、海外では、プロペシアの服用を中止しても副作用の懸念が払拭できないとして訴訟の問題まで発展しているようで、アメリカでは日本の厚労省に相当するFDAが警告を出しています。
詳しく見る ⇒ プロペシアの性機能に関する副作用は本当です
アボルブの副作用
ザガーロについても適応拡大の承認を受けるにはAGAを対象にした国内での臨床試験をおこなったのでしょうが、まだその成績は明らかにされていません。
2009年に前立腺肥大症での申請時の副作用成績では、
生殖器系および乳房障害 (アボルブ添付文書)
国内臨床試験において、調査症例403例中44例(10.9%)に臨床検査値異常を含む副作用が見られた。
性機能に関する副作用の主な者は、勃起不全13例(3.2%)、リビドー減退 7 例(1.7%)、乳房障害(女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感)6 例(1.5%)であった
と記載されており、プロペシアと同様に性機能に関する副作用があることは間違いありません。
1%以上
- 勃起不全
- 乳房障害(女性乳房化、乳頭痛不快感)
1%未満
- 射精障害
頻度不明
- 精巣痛
- 精巣腫張
この数字をどう判断するかはそれぞれの方によって異なります。
詳しく見る ⇒ アボルブの発毛効果はプロペシアより優れるのか
ファイザーのプロペシアを服用している国内男性は50万人はいると見られ、個人輸入による服用者を入れれば150万人が服用していると推定されています。
プロペシアの性機能に関する副作用は1~5%だといわれています。
もしこれをザガーロに当てはめれば、150万人のうちの1万5,000人~7万5,000人が勃起不全や乳房障害が見られるという計算になります。
さらに、
アボルブにはPSAの値を低くするという副作用があります。
PSAというのは前立腺癌のマーカーで、前立腺になると血中PSA値が上昇します。
40歳以上の男性では健康診断の血液検査でこの項目があるはずです。アー路
アボルブは前立腺癌になってPSAが高くなってもこれを下げてしまいますので、前立腺癌の発見が遅れるという副作用があるため、健康診断時にはアボルブを服用していることを医師に申告する必要があり、これはザガーロでも同じことですから要注意が必要です。
まあ、何はともあれアボルブがザガーロとしてAGAの適応で承認されました。
現時点でも、多くのAGAクリニックで適応外処方としてAGAに前立腺治療薬のアボルブを処方しているといわれていますが、これからは多くのAGAクリニックや皮膚科でAGA治療薬としてザガーロが処方可能となりますので、もう少し待ってください。
ザガーロに関して新たな情報がありましたらすぐにアップいたしますので注目しておいてください。
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